金賞(中堅・中小企業部門)株式会社高速オフセット
営業推進部 デジタル事業室 室長 西崎光祐氏
印刷会社が進める
「デジタルと紙の融合」
DXで地域の問題を解決
株式会社高速オフセットは、毎日新聞グループホールディングスのグループ会社で、社名のとおり印刷物をメインに取り扱っている。現在、取引企業数は3,500社を超えており、新聞・情報誌を含めて50紙以上制作している。また、企業のメディアやオウンドメディアの運営も実施しており、SNSにおいてはトータル50万人ものフォロワーを抱えるという。
他方、新規事業として「地域創生」というビジョンを大きな柱に掲げて、印刷会社ならではのエコな印刷商品の開発や海外物流のDX化に取り組むことで、具体的に地域への貢献を果たしている。
「当社では、2022年にデジタル事業室を新設。この年を高速オフセットのDX元年と位置付け、これまで連携が薄かった営業部、企画編集部、制作部から人材を募って連携を図り、デジタルと紙を融合させるための施策を考えてきました。」と語るのは営業推進部デジタル事業室室長の西崎氏。
社内だけにとどまらず行政や民間企業とも連携しながら、地域の問題解決につながるDXの推進を目指している。
「伝えたい、を伝わる形に」。高速オフセットは、ポスター、パンフレット、チラシ、冊子の制作、新聞印刷のほか、これまで多くの広報物の印刷・企画制作に携わっている。当然、地方自治体の観光冊子制作や海外向けサイト・SNS運用の実績も豊富だ。
西崎氏は、「情報を“作る”“発信する”なかで『もっと日本の良さを世界に知ってもらいたい』という想いがありました。そんななか、『海外のお客様向けに直接現地にお土産を送ることはできないか?』と相談され、お土産を配送する電子伝票が簡単に店頭から出力できる【ハコボウヤ】の開発が始まりました。」と開発のきっかけを話した。
海外配送を行いたい店舗も、手書き伝票の外国語の文字が読めないなど、その複雑なオペレーションに頭を悩まし、これまで海外配送を断念していたという。【ハコボウヤ】の導入により、店頭の受付処理から配送伝票の出力までがDX化され、店頭から海外配送の伝票を簡単に出力することが可能となった。
また、海外のユーザーが分かりやすく入力できるように、ユーザー自身のスマートフォンを入力機器として使用。本人自らの手で、送り主と送り先の入力を行ってもらう。さらに、英語・簡体字・繁体字・韓国語による入力フォームを用意し多言語化に対応している。
店舗側は、ユーザーが作った送り主と送り先の二次元コードを読み取ることで、簡単に間違いのない送り状が作成できるようになった。
店頭配送の流れとしては、以下の1~4となる。
- 商品を購入したいお客様が、自身のスマートフォンで店頭に置いてあるQRコードを読み込む。表示される情報に沿い、お客様が商品の送付先を入力する。
- お客様の画面にQRコードが表示されるので、店舗のスマホでお客様のQRコードを読み取る。画面の案内に沿って入力を完了すれば、配送データ登録が完了する。
- 「送り状を発行」ボタンを押して海外発送用の伝票PDFを生成する。「印刷」を押すと、接続しているプリンターで海外発送用の伝票が印刷できる。
- 印刷された伝票を梱包箱に貼り付けて、集荷依頼を行う。
「これまで、海外の方から配送を頼まれた際に、手書きの伝票を作成したり、配送情報を転記したりするのに20~30分かかっていましたが、【ハコボウヤ】を利用することで5分足らずで伝票が作成できるようになりました。また、店頭での販売情報がデータとして残るようになり、どの国の人がどの商品を好んで購入するのか分かるようになったことも好評を得ています。」と西崎氏は話す。
導入店からの評判も良く、以下のようなコメントが届いているという。
「海外に送れるサービスが店頭にあると、中にはたくさん商品を買ってくれる旅行客の方もいらっしゃいますので、1人あたりの購入単価UPに繋がっていると感じています。」
「導入前のオペレーションは、訪日のお客様に手書きいただいた配送先情報を本社に送り、本社から海外へ発送していたんです。手続きするだけで時間がかかりますし、手書きだと『何を書いているかわからない』ということもありました。【ハコボウヤ】はスマホで情報を入力していくという分かりやすさもありますし、お客様ご自身が情報入力することで、記入していただいて文字が分からないなどのトラブルもないため、積極的に海外配送のご案内ができるようになりました。」
「これまでは、海外のお客様に『一週間後じゃ受け取れない、どうにかならないの?』というときに対応することができず、購入に至らないケースがありました。その”購入に至らないケース”を、海外発送という選択肢があることで解消できたというのは大きかったです。」
また、サービスを提供していくなかで、国際エクスプレスのDHLジャパンから声掛けがあり、システム連携することでDHLの配送伝票が出力できるように。今後は、このような店頭からの直送システムの免税対応を行うための取り組みを、DHLジャパンや免税協会等とともに取り組んでいく予定だという。
「今後はさらに導入店舗を増やし、システムの利便性を向上させながらインバウンド需要を取り込んで、地域貢献に繋げていきたいと考えております。」と西崎氏は熱く語った。