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グランプリ旭光電機株式会社
競争力を生む“攻め”と“守り”のDX
旭光電機株式会社は、1947年創業、神戸市に本社を置く、センシング/コントロール技術に強みを持つ製造企業です。DX推進の組織体制や業務効率化だけでなく、新規製品の開発などの取り組みが評価され、KANSAI DX AWARD 2025 グランプリを受賞しました。
特定顧客依存などの課題を抱えながらも、現場ファーストを掲げ改革を推進。IoT・AIを活用した「守りのDX」と、自社技術を活かした新製品開発の「攻めのDX」を両立させ、生産性向上と新規事業創出を実現してきました。
今回は、こうした取り組みの背景や今後のビジョンについて、和田貴志代表取締役社長に伺いました。
─貴社がDXに取り組むことになった背景を教えてください。
当社は創業以来、センシング/コントロール技術を強みとしてきましたが、長年にわたり特定顧客への依存が続き、その構造が事業の成長を阻んでいました。転機となったのは、2020年の感染症拡大でした。主要顧客の売上が急落し、長く続いてきた安定的な取引に陰りが見え、「じっとしていたら死んでしまう」という危機感を抱きました。この事業リスクの顕在化が、自社で価値を生み出す企業へ転換しようと決断する大きなきっかけになりました。
─具体的には、どのような取り組みからDXを進められたのでしょうか?
まず、神戸市のIoT推進事業に参加し、工場の稼働データを可視化したことで、運搬作業によるライン停止や頻発するチョコ停(短時間の設備停止)などの対応に多くの工数が割かれていることが判明しました。また、既存設備や人力中心の効率改善には限界があることが明らかになり、デジタルの力で現場を変える「守りのDX」の必要性を認識しました。
さらに、受け身の事業体質から脱却し、付加価値を生み出す企業への転換を目指して、IoTやAIの活用に挑戦し、自社発の製品・サービスを展開する「攻めのDX」を推進しました。
こうした取り組みにより、当社は新市場の創出をめざす「攻めのDX」と現場効率化の「守りのDX」を両輪として、企業変革を進める方針を固めました。
─DXを進めるうえで、特に課題や苦労された点は何でしょうか?
当社が直面した主な課題は、「現場の意識改革」と「リソース不足」でした。自動搬送ロボット導入時には「人が運んだ方が早い」といった声が上がり、部分的なIoT導入に対しても「手間が増えるのでは」と反発がありました。新規事業開拓においても「いつ売上につながるのか」と慎重論が出るなど、トップダウンだけでは現場に具体像を示すことが難しい状況でした。加えて、人材不足や従来型の改善活動の限界も重なり、ボトムアップによる改善にも限界が見えてきました。
─初期のDX導入にあたって、特に意識されたことは何でしょうか?
まず現場ファーストを重視し、初期導入するDXは日常業務で触れやすく、効果を実感しやすいものにしました。成果は数値と体験の両面で可視化し、誰でも理解できる形で共有。これにより反発は解消され、改善意欲が自走する状態を生み出しました。
リソース不足への対応としてはスモールスタートを徹底。手間や費用の少ないテーマから試行し、市販品を活用して短期間で成功体験を積み重ねることで、現場が無理なくDXに着手できる体制を整えました。効果が確認できたものだけを標準化・拡張する方針で、余計なコストや管理負荷も抑えられています。
─経営と現場の連携はどのように進められましたか?
経営層の意思と現場の課題解決力をつなぐ仕組みも構築しました。経営層が方向性と投資枠を示す一方で、社長と各部門のメンバーが参加するDXサークルを設置し、テーマ選定から課題解決・決裁まで一気通貫で実施しています。経営は「何を目指すか」、現場は「何をどう実装するか」を決める「ほどよいトップダウン × ほどよいボトムアップ」により、現場起点の改善活動を円滑に運用しています。
─攻めのDXへの取り組みでは、社内の理解や協力を得るために工夫されたことはありますか?
新規事業では、「新商品創出チーム」と「DXソリューション部」を設置し、方針を明確化しました。顧客ヒアリングや異業種連携、社内アイデア募集を通じてニーズを収集し、社員一人ひとりがDXを自分ごととして捉える機運を高めました。
さらに、新規分野の成果は外部メディアや社内で共有し、成功案件は表彰することで、主体性とモチベーションの継続的向上を図りました。
これらの取り組みにより、現場の理解と協力を得ながら、限られたリソースでも小さく速く回し、DXの基盤を整えることができました。
─貴社が取り組まれているDXの具体的な内容を教えてください。
守りのDXでは、工場で自動搬送ロボットを導入し部材運搬を効率化。短時間設備停止(チョコ停)には自社開発のIoTで即時通知と原因特定を実現しました。また、上長呼び出しにはカスタマイズ済みの呼び出しシステムと腕時計型通信端末を導入し、作業効率と生産性を向上させています。
攻めのDXでは、設備単位の電力消費量やCo₂排出量を可視化する「wattXplorer」を開発。既存設備への後付けが可能で、省エネや脱炭素を支援します。さらに、古い設備をデジタル化する「Smart Fit PRO」により、稼働状況やトラブルを遠隔で把握でき、省人化と迅速対応を実現しています。

─それらの取り組みの成果について教えてください。
売上と価値創造の面では、自社開発製品の売上比率が現在10%に達しており、2028年には35%を目標としています。独自製品で顧客の課題を解決し、新たな付加価値を創出しています。DXソリューション部では、センサーとサービスを組み合わせた製品を提供し、顧客から高い信頼を獲得しています。
業務効率の改善では、自動搬送ロボット導入により年間1,000時間以上の移動工数を削減。また、上長呼び出しシステムで年間48万円の労務コストを節約。チョコ停の分析により、多くのダウンタイムが段取り替えに起因していることが判明しました。さらに、wattXplorerの導入で電力消費を23%削減(年間約22,000円/台、CO₂排出量298kg/台削減)しています。
─KANSAI DX AWARD受賞後の社内外の反響について教えてください。
社内ではこれまでの地道な挑戦は正しかったという強い達成感と誇りが共有され、「現場の知恵をデジタルで強化する」方針がより浸透しました。若手社員は課題発見や改善に積極的になり、熟練者も技術伝承や標準化に前向きです。
─今後のビジョンや計画について教えてください。
これまでのDXで培った知見と現場の成功体験を基に、未来志向の挑戦を加速させます。「世界に通用するものづくりDX企業」として新たな価値創出と社会課題解決に挑み、Robot + AI + IoTを融合した「RobAIoT」を具体化し、センサ技術・データ解析・自律制御を組み合わせ、日本発の製造DXーAIモデルとしてグローバル展開をめざします。
さらに、搬送ロボットや省エネ制御など「守りのDX」を深化させ、自社工場の完全自動化を視野に、省人化と高品質生産を両立しつつ、CO₂削減による環境負荷低減を追求します。また、「wattXplorer」で蓄積したデータを活用し、異常予兆検知やスマートファクトリー化を実現をめざし、成功モデルは地域企業やパートナーにも展開します。

─DXを進める上で大切にしていることは何でしょうか?
DXを推進するには、変化を恐れず挑戦し続ける強い意志が不可欠です。意思決定者はリーダーシップを発揮し、方向性や投資方針を明確に示す必要があります。一方、現場にはデジタル化の利便性を体験してもらい、共感と信頼を築くことが重要です。「デジタルは現場の知恵を強化する手段である」という考えを持ち続けることが、DXを定着させる鍵となります。
─最後に、これからDXを推進される企業の皆さまへのメッセージをお願いします。
はじめから完璧を目指すのではなく、「失敗しても構わないので、まずはスモールスタートから試す」という姿勢を大切にしてください。DXの成果は「守り」に留まらず、「攻め」によって新たな価値を創造することにあります。DXは単なる技術導入ではなく、「モノと人と世界をつなぎ、価値ある暮らしを創造する」企業の存在意義を実現する技術です。当社では工場見学も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。お互いに挑戦を続け、この変革の時代を共に乗り越えていきましょう。










