金賞(大企業部門)大和ハウス工業株式会社

建設業界の未来を切り拓く
大和ハウス工業の全社DX戦略

大和ハウス工業株式会社は、1955年創業、大阪市に本社を置く、住宅・建築・都市開発を中心に幅広く事業を展開する総合建設企業です。建設プロセス全体の効率化をめざす「建設DX」の取り組みが評価され、KANSAI DX AWARD 2025 金賞(大企業部門)を受賞しました。同社は、BIMやデジタルコンストラクションを活用し、設計から施工、維持管理のプロセス全体をデジタルで統合する取り組みを行っています。今回は、こうした取り組みの背景や苦労、成果、今後の展望について、技術本部 技術戦略部 1室 宮内尊彰室長に伺いました。

─貴社がDXに取り組むことになった背景を教えてください。

建設業界は、他産業と比べても継続性の危機や法令遵守のリスクが顕著であり、特に中小企業への影響が大きく出ています。加えて、海外企業とのデジタル競争の遅れは、建設業界への新規参入リスクや、グローバル展開の足かせとなる可能性もありました。こうした状況を踏まえ、当社では第7次中期経営計画において、全事業でのDX推進を成長戦略の柱として掲げ、なかでも建設技術分野におけるDX基盤の構築を重点的に進めてきました。

─建設業界におけるDXとはどのような取り組みでしょうか?

建設DXとは、従来培ってきた建設技術にデジタル技術を掛け合わせることで、設計・施工・維持管理までのプロセスを効率化し、これまでの建設業界の働き方を変えることができる取り組みです。これにより、働き方改革や業務効率化といった直接的な成果に留まらず、建設業そのものの魅力向上にもつながると考えています。業界全体が抱える構造的な課題の解決に貢献したいという思いが、この取り組みを推進する大きな原動力となりました。

─DXを進めるうえで、特に苦労された点は何でしょうか?

建設DXの推進にあたって、最初に立ちはだかった課題は、全社的な機運醸成でした。2017年に5名体制で発足したBIM推進室からスタートし、2019年にデジタルコンストラクションプロジェクトを契機に建設デジタル推進部を設置、そして2022年には建設DX推進部として体制をさらに拡大しました。しかし、体制を強化すれば自動的に浸透するわけではなく、全社員を巻き込むためには、単なる技術導入にとどまらず、「DXを文化として根付かせる」ための工夫が必要でした。

─具体的にはどのような工夫をされたのでしょうか?

そのための工夫は4点です。1点目は機運醸成のための推進委員会の設立社内企画「MeetUP」です。先行事例を共有し、成功体験を社内で可視化することで、社員の関心を引き出し、DXへの参加意欲を高めました。2点目はデジタル人財への育成です。全社の技術社員へのデジタル教育を実施しました。3点目は施策ごとに目的と目標値を明確にしたこと。4点目は職場環境の整備です。「建設業を魅力あり、楽しくする取り組み」であるからこそ、楽しく前向きに取り組める雰囲気づくりや職場環境の整備も重要視していました。

─具体的にはどのようなDXの取り組みをされたのでしょうか?

当社の建設DXの取り組みは「BIM」「デジタルコンストラクション」の大きく2つに分類されます。BIMでは、建物の形状情報を3Dで可視化し、部材の仕様や管理情報を一元管理することで、設計から施工、維持管理までの情報共有を効率化しています。一方のデジタルコンストラクションでは、施工現場に定点カメラを設置し、スマートフォンやタブレットでリアルタイムに進捗を把握できる仕組みを導入することで、施工の効率化と品質向上を図っています。

─実際に成果は出ているのでしょうか?

具体例として、応急仮設住宅の配置計画案自動作成プログラムがあります。2019年の台風19号では、このプログラムを活用することで、通常1週間かかる配置計画の承認期間をわずか2日に短縮しました。さらに、BIMデータを設計フェーズに引き継ぐことで、工期も従来の2か月から35日に短縮できました。なお、プログラムの現地でのチューニングやシミュレーション動画の作成を担当したのは、大学でBIMを学んだ2名の新人社員で、大活躍してくれました。

さらに、D-camera(遠隔カメラ)、物件ポータルサイト、施工ダッシュボード、WCP(仮設計画)、AI検査などの新たなデジタル施策にも取り組み、複数現場の同時管理・施工計画の効率化・注意点の可視化・品質向上・安全性向上といったスマート施工管理を実現しました。施工協力会社との情報共有もスムーズになり、現場環境の魅力向上や減災効果も確認できています。
現場からは、「現地調査の頻度が減り、移動時間を別の業務に充てられるようになった」「スマホで完結するので、狭い現場でも紙の記録スペースが不要になり作業が楽になった」「工程変更にタイムリーに気づき、翌日の予定を安心して立てられる」といった声が寄せられ、デジタルが“実務で使える仕組み”として定着しつつあります。
当社は今後も、協力会社を含めた現場全体の生産性向上と、誰もが働きやすい魅力ある現場環境づくりをめざし、建設DXをさらに推進させていきます。

─KANSAI DX AWARD 受賞後の社内外の反響について教えてください。

2017年からDX施策を進めてきましたが、今回のような賞をいただくのは初めてでした。これまで取り組んできた内容が正しいのか、もっと効率的な方法はないか、なぜ推進展開がうまくいかないのかなど、日々紛糾し、時にはやり直したり急激な方向転換を行うこともありました。しかし、道のない道を自らが船頭となって、当部スタッフおよび当社社員一同で取り組んできたことが評価されたのは、何よりも誇りに思っています。

─今後のビジョンや計画について教えてください。

今後、当社はこれまでに構築してきた建設DX基盤を活用し、お客様や関連企業との協創を通じて、魅力ある建設業の未来を創造していきます。業界全体の課題解決はまだ道半ばではありますが、BIMやデジタルコンストラクションを核に、デジタルによる強みをさらに進化させることで、建設業界のスマート化と持続性の向上に貢献していきます。引き続き、業務効率化と品質向上の両立をめざし、建設業の新たな価値を生み出してまいります。

─最後に、これからDXを推進される企業の皆さまへのメッセージをお願いします。

AIによる業務変革は、今後あらゆる分野や企業に広がっていくと考えています。ただし、 AIを導入するだけで効果が得られるわけではありません。DXで定義されている通り、「データやデジタル技術を活用しながら、企業の風土・文化・プロセスを変革し、競争優位を確立する」取り組みが土台として重要です。そのうえで、データを“作る・蓄積する・活用する”取り組みを今の段階から進めておくことが、AIの価値を最大限に発揮できる“AI Ready”な状態につながると考えています。

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