金賞(中堅・中小企業部門)株式会社デジック

データで考える習慣をつくる
~70代から若手まで
全員参加で実現した町工場のDX~

株式会社デジックは、1988年創業、大阪府八尾市に本社を置く、グラファイトパッキン製造と生産管理システム開発を行う製造企業です。全従業員が前向きに参加できる「現場目線のDX」に取り組んだ点が評価され、KANSAI DX AWARD 2025 金賞(中堅・中小企業部門)を受賞しました。紙による管理や属人化、棚卸負荷といった町工場特有の課題に向き合い、「現場密着型DX」を推進。作業実績をリアルタイムに取得、在庫管理のデジタル化、自社開発のAssistシリーズによるデータ活用など、人を中心にした改善を実現し、全員がデータを基に改善できる体制を構築しています。今回は、その背景や成果、今後の展望について倉田慎介代表取締役社長に伺いました。

─貴社がDXに取り組むことになった背景を教えてください。

工場を取り巻く環境は年々厳しさが増し、当社では人手不足や技術継承の困難さ、仕事の属人化が大きな問題でした。短納期小ロットの案件増加で現場は忙しく、生産管理システムを十分に活用できない状況も生まれていました。現場では「この案件は利益が出ているのか」が把握できず、忙しく仕事をしてるのに儲かっているのかどうかすらわからない。これが当時の実態でした。

─DXに取り組むうえで、大切にしている考えや社員への想いを教えてください。

「従業員のワークライフバランスを実現し、健康を第一に考えられる職場環境をつくりたい。」これがDXに取り組み始めた最大の目的でした。当社は創業以来、「日本のモノづくりに貢献したい」という想いを大切にしてきました。自社も町工場として課題を抱えてきたからこそ、その課題を乗り越える取り組みが、自社だけでなく日本の製造業全体の力になると考えています。こうした想いのもと、15年以上続けている3S活動にDXを組み合わせ、「突き抜けるまでやろう」という強い決意のもと、取り組みを開始しました。単に効率化を図るのではなく、従業員の健康と幸せ、そして日本のモノづくりの未来を守るために、従業員全員が主体的に参加する体制を整え、全社一丸となってDXを推進しています。

─DXを進めるうえで、特に課題や苦労された点は何でしょうか?

全従業員に作業実績を入力してもらうことが大きなハードルでした。特に70代の作業者も含め幅広い年齢層がいるため、これまで紙や口頭で行っていた作業記録をデジタル化することへの抵抗感がありました。また、材料在庫管理も手作業で行っており、棚卸には4時間以上かかるうえ、入力ミスや転記ミスも少なくありませんでした。

─その課題をどうやって乗り越えられたのですか。

抵抗感をなくすために、まずは“誰でも簡単にできる仕組みづくり”から始めました。そこで、作業実績をQRコードで入力できる専用端末を自社開発。クリック一つで実績を登録できるようにし、複雑な操作を一切なくしました。さらに、材料管理も完全にデジタル化。【重量計測 → ハンディ入力 → QRコード貼付 → Assistへ自動登録】という流れをつくり、手作業やミスが発生しやすい工程を一掃しました。こうした工夫により、年齢やデジタル経験に関わらず、全従業員がスムーズにDXに参加できる環境を整えることができました。

─成功の秘訣は何だったと思われますか?

DX成功のカギは、大きく3つあると考えています。
まず1点目は、経営者が先頭に立ったことです。初期は私自身が毎週ミーティングに入り、現場から直接課題を聞きながら改善を進めました。勢いがついた段階でリーダーへ権限を渡し、自走できる体制へ切り替えました。
2点目は、徹底した目的の共有です。「DXで生まれた時間を顧客との接点強化に使う」という目的を全員と共有したことで、現場の協力が一気に進みました。
3点目は、現場目線で進めたことです。作業者が「便利になった」と実感できなければDXは続きません。使いやすさ・運用しやすさを最優先に仕組みをつくりました。

─貴社が取り組まれているDXの具体的な内容を教えてください。

Assistを活用するために「データの貯める化 → 見える化 → 使う化」という3ステップで進めたことで、無理なく全員がデータ活用できるようになりました。

─「データの使う化」では、Assist AIを開発し、ChatGPTと連携して専門知識がなくてもデータ分析やグラフ作成が可能になっています。

─それらの取り組みの成果について教えてください。

材料棚卸時間は4時間から30分に短縮、全従業員の実績入力率は100%達成。納期遵守率も100%に向上し、不良件数は9件から3件に減少しました。属人化の解消、標準化された作業プロセス、知識の見える化、リアルタイム進捗管理など、定性的な成果も大きく、現場の雰囲気も前向きに変わりました。

─KANSAI DX AWARD受賞後の社内外の反響について教えてください。

倉田:社員の意識がさらに高まり、DX活動が活発化しました。小規模でも現場から変化を起こせることを実感でき、自社の誇りにもつながっています。取引先からも「町工場でもここまでできるのか」と注目されました。

─今後のビジョンや計画について教えてください。

今後は、Assist AIの機能拡充を進め、蓄積データを活用した予測分析や属人化の解消など、より高度なデータ活用に取り組んでいきます。また、当社が現場密着型DXの中で培ってきたノウハウを、他の町工場にも積極的に展開する予定です。さらに、弊社ではDX工場見学の受け入れや、生産管理システム「Assist series」の提供も行っています。作業実績取得専用端末、タブレットを活用した朝礼、QRコードによる在庫管理など、町工場でも実現可能なDXの具体的な事例を直接ご覧いただけます。今後もこうした取り組みを継続し、DXの力でより多くの町工場が進化できる未来をつくっていきたいと考えています。ご興味がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。

─最後に、これからDXを推進される企業の皆さまへのメッセージをお願いします。

DXを進めるうえで一番大切にしているのは、「人を中心に据えること」です。技術や仕組みを導入することが目的ではなく、実際に使う人が「便利になった」と感じられる改善こそが成功の鍵だと実感しています。そのため、現場から生まれる改善アイデアを大切にし、長年取り組んできた3S活動と並行してDXを進めることで、自然と改善文化が根付いていきました。また、常に新しい技術を学び、現場のニーズに合わせて柔軟にアップデートし続ける姿勢も欠かせません。町工場だからこそできる、現場密着型のDXがあります。現場の声を聞き、全員を巻き込み、目的を共有することで、着実に成果を生み出すことができます。当社の取り組みが、少しでも多くの町工場の参考になれば嬉しく思います。町工場の現場から、変化を起こしていきましょう!

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