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Kansai D&I News
2023.6.26 企業の取り組み最前線

9つの勤務パターンで、
育児と仕事の両立を支援
株式会社髙島屋

髙島屋 人事部 ダイバーシティ推進室 室長 三田理恵氏

9つの勤務パターンで、育児と仕事の両立を支援
株式会社髙島屋

髙島屋 人事部 ダイバーシティ推進室 室長
三田 理恵 氏

約30年前から育児と仕事を両立させるための育児勤務制度の開発に取り組み、女性が輝く先進企業2017の内閣総理大臣賞を受賞するなど、女性活躍推進への取り組みが高く評価されている髙島屋。多様な働き方を可能にする施策と運用上の工夫、課題などについて、髙島屋人事部ダイバーシティ推進室室長の三田理恵さんにお話を伺った。

高島屋 イラスト

――9パターンもの育児勤務制度があり、従業員がそれぞれのニーズに応じて働き方を選べるのは魅力的だと思います。マネジメントをするうえでの難しさはないのでしょうか。

 小売業である百貨店の働く現場の特徴は、定休日と所定休日数が合致しないこと、1日の所定労働時間ではお店の営業時間をカバーできないことです。現場はシフト制で、一日の勤務に早番・遅番があり、従業員の雇用形態も正社員、有期/無期契約社員、再雇用社員などさまざま。その都度違うメンバーで現場を回していくのが常なのです。管理するマネジャーがいない日やいない時間帯も珍しくなく、自律的にチームで働くことに向き合ってきた長い歴史があります。もちろん、多様な働き方がミックスされた現場のマネジメントは高度なスキルが求められますが、マネジメントのみならず、メンバー含めてコミュニケーションの工夫などが現場に根付いていると思います。

 髙島屋の育児勤務制度は、1991年に2パターンからスタートし、30年近くかけて9パターンまで増やしてきました。従業員が長く働けるように、時間をかけて制度導入を進めてきた結果だと考えています。

出産・育児で退職しないための環境整備

――多様な育児勤務制度を充実させると、一部の従業員に繁忙期や遅番の負担が偏ってしまう状況も懸念されます。その点についてどのように対応されているのでしょうか。

 まず働くことをセーブするための制度ではないことをしっかりと伝えることです。育児をしながら仕事で活躍することを支援する制度、という制度設計の根本的な考え方を共有しています。さらに、育児支援だけでなく、介護支援やボランティア活動を支援する休暇制度なども含めてトータルに、ライフステージのニーズに合わせた働き方を支援する制度も充実させています。

 土日勤務などの偏りに対する不満がないとは言えませんが、従業員の中には土日の混雑を避けて平日に休みたいという人もいます。育児中は保育所が休みになる日曜や祝日に休みを取りたいという方が多数ですが、それ以外の人がどうなのか。売上という業績面でみると、来客数の多い繁忙期に出社する方が有利です。必要なのは一人ひとりの本当のニーズを見ていくことだと思っています。

 運用面では、業績評価と行動評価の二本立てで成果を評価しています。百貨店はチームワークがベースになるので、周囲との協働が欠かせません。自分の売上に直結しない行動も適切に評価し、数値に表れない職場への貢献を見ていく工夫をしています。

――多様な働き方を導入するうえで、マネジメント層への理解活動はどのように行ってきたのでしょうか?

 マネジメント層に対して制度利用を促すような理解活動は特に行っていません。むしろ、以前は子どもを産んだら仕事をセーブするのが当たり前という雰囲気があり、いわゆるマミートラック*のような風土があった時期もありました。

 2013年に方針や制度設計を見直し、仕事をセーブするためではなく、活躍してもらうための制度とメッセージをすることで、マミートラック*のようなことはなくなりました。
*出産した女性が職場復帰した際、自分の意志とは関係なく、比較的責任の軽い仕事を割り振られ、昇進・出世コースから外れてしまうこと

――時短勤務をしながら管理職として働くことをためらう女性社員に対し、会社として後押しする施策があれば教えてください。

 大事なことは、会社として女性の管理職登用をためらわないことです。遠慮していたらうまくいきません。上司も人事も「徹底的にあなたをサポートするから、まずやってみよう」と後押しします。一方で本人のためらいも想定されるので、配属先の配慮も必要です。突発的な事案が起きたときに上司がフォローしやすい職場や、隣の売り場のマネジャーがフォローに入れるような体制が取れる職場に配置するようにしています。

 キャリアについては、どのタイミングでどういう働き方をするかを自分で考えることが大切です。育児をしながら仕事をしていると、どうしても日々の仕事をどうこなすか、時間をどう使うかといった短期的な視点になりがちです。キャリア開発に向き合えるよう、長期的なキャリアを考えるワークショップを年2回実施しています。

――これまで取り組んできたなかで課題があればお聞かせください。

 育児勤務制度を導入した30年前から時代が流れ、育児だけでなく介護や病気の治療をしながら働く人も増えており、多様な働き方がより一層進んでいます。一方で、以前と比較し従業員数が減り、少人数で仕事をこなさなければならなくなっています。

 その意味では、これからは辞めずに働き続けるだけでなく、辞めずに活躍してもらわないといけない。従業員のなかにも、育児中でも仕事のペースを落としたくないと考える人が増えてきています。本人の意志に制度を寄り添わせながら、方向を見定めていく必要があると考えています。

――女性活躍に向けた今後の取り組みとして、検討されている事柄があれば教えてください。

 当社の女性管理職比率は、近年30%前後をキープしています。そこからぐんと伸びていないのが悩みのタネですが、その上の部長級クラスの比率が伸びていることに手応えを感じています。課長クラスの管理職が増えたことで、さらにその上を目指す人が増えるという段階に来ているのではないかと。身近なところでは、人事部の副部長が女性になりました。

 情報がオープンになり、肩書でなく「さん付け」で名前を呼ぶようになって、部門の風通しがすごくよくなったと感じています。とはいえ、部長クラスの女性比率もまだ20%に達したところなので、まだまだ圧倒的に女性の管理職、役職者が少ない。現状に満足することなく、さらに高みを目指していきたいと考えています。