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Kansai D&I News
2023.7.26 企業の取り組み最前線

情報ツール活用で時短を支援、自由度が上がれば責任感が増す
サンコーインダストリー株式会社

奥山淑英氏

情報ツール活用で時短を支援、自由度が上がれば責任感が増す
サンコーインダストリー株式会社

サンコーインダストリー 代表取締役社長
奥山 淑英 氏

出産・育児で退職しないための環境整備

大阪市に本社を置く、ねじの総合商社サンコーインダストリー。女性にとって働きやすい職場づくりに取り組み、大阪市が認証する女性活躍リーディングカンパニーに選ばれ、関西財界セミナー2023で「輝く女性賞」を受賞した。京都でのライブハウス経営を経て2003年に入社、12年から三代目社長を務める奥山淑英さんにD&I、女性活躍のポイントをうかがった。

――女性が安心して長く働ける職場環境をつくるために実施している施策をお聞かせください。

 堅い、暗い、男社会のイメージを打破するための取り組みとともに、女性社員に長く働いてもらえるような就業制度の整備を行っています。時短勤務の推進、育休明けの職場復帰に向けた相談、始業前と終業後の時間外勤務の削減など、働く時間を少なくすることに注力し、就業規則の整備や環境整備を進めてきました。

その一環として、在庫管理や受発注を行うためのシステムを導入。電話で発注があった場合、折り返し返事をするのではなく、システムで在庫を確認し即答できるようにしました。1回のタスクの処理スピードを上げることで、時間内に業務を終わらせることを目指しています。

 そうした時間に関する制約を設ける一方で、髪型や服装、あるいは働く時間に関する自由度は上げていく、それが取り組みの方針です。東大阪物流センターには、アルバイト、パートの女性が高校生から60代まで100人以上いますが、シフト表はありません。働きたい曜日と時間を契約するだけで、ほぼうまくいっています。自由度が上がると、パートも社員も、責任感をもって仕事をします。皆がそれぞれに、私がいないとこの会社がもたないと思ってくれている。非常にありがたいですね。

――制度の整備やコンピュータ化を進めていくうえで反発はありませんでしたか。

 ないです。職人はものづくりの知識が必要ですが、我々商社は必要ありません。知識を共有するためデータ化し、徹底的に分業し、属人化を防いでいます。仕事の課題を見つけ、改善するTQC活動に全員が参加しており、何かを変えていくことに対する抵抗感は少ないと思います。

 TQC活動では、社員からの改善提案の申請をほぼ通します。そうすることで末端まで参画意識が芽生えてくるのです。顧客の分類やラストオーダーの前倒しなどを行い、受発注の管理システムの変更も常々行っています。

――育休や時短の制度を整えていくにあたり、課題をどのように乗り越えてきたのかをお教えください。

 約30年前に、先代社長(現会長)である父が長く働きたいという女性社員の気持ちを汲んで制度を導入しました。女性は処理能力が高いし、お客さま対応も上手い。そういう女性たちに協力してもらいたいという思いが強かったのだと思います。

 現在も育休や時短の取得者はどんどん増えていて、チーム内で仕事や情報が共有できるようにしています。電話は課の代表番号にかかってきますから、人が少なくなると単純に一人当たりの電話の本数が多くなる。負担は増えますが、時短の女性社員が退社する4時ごろにはピークを越えているので、大変なことにはなっていませんね。

 新しいツールの利用にも早くから取り組んできました。ねじは太さと長さと頭の形状と表面処理によって分類され、製品のバリエーションが多いのが特徴です。オイルショック後、在庫管理をバーコードで行うためにコンピュータを導入。40年前はオフィスコンピュータの時代で、メーカーと一緒に苦労して自動倉庫と接続するシステムを構築しました。日本で第一号だそうです。リーマンショック以降はWebに力を入れ、現在はWeb注文が75%を占めています。

出産・育児で退職しないための環境整備

――社内の風通しをよくするためにイベント活動をされていますが、経営者として意識されていることや、大切にしている思いをお聞かせください。

 会社は小さな社会。社会を構成するにあたっては、助け合いの風土を醸成することが大切です。売上などの数値目標はあるけれどノルマではない。目標を達成すると報酬は出しますが、達成しなくても罰はありません。営業活動は2人組で行い、個人に数値目標を負わせないようにしています。評価シートでは数値評価よりも行動評価を重視しています。服務に精励しているか、勤務態度は良好か、といった通信簿のようなものですね。

 イベント活動としては、百貨店の物販やトレーニングジムでのピラティス、ふるさと納税の勉強会、有名人による会社視察など、社員が楽しめることを企画しています。

――取り組みの課題や反省点などがあればお教えください。

 ここ数年の課題は社員の定着率を上げること。安心感をもって仕事ができることが重要と考えて、5年前から東京支社への転勤も社内の部署異動も廃止しました。落ち着いて長く仕事をしてほしいからです。

――今後、特に取り組んでいきたいことを教えてください。

 人に関しては、女性の役員登用です。現在、部長一人、課長は大勢いますが、もっと女性に活躍してほしい。事業に関しては、海外販売に注力していきたいと考えています。グローバルに展開して注文が得られる状況を作るために、翻訳ツールやパソコンの活用など、少ない労力で大きな成果を上げられる方法を検討しています。

出産・育児で退職しないための環境整備

93歳のギネス認定「世界最高齢総務部員」
玉置泰子さんが語る仕事の極意

仕事の主人公は自分自身。チャレンジを楽しんで

 1955年にサンコーインダストリーに入社。当時の事務所は2階建ての民家でした。それまでは規模の大きな工場で働いていたので、最初は戸惑いました。実は生意気にも「ここは私の働くところではない」と3日で辞めようとしたんです。でも紹介してくれた人に「何もやってへんのに雰囲気が気に入らんとは何事や!」と一喝され、目が覚めた。

 以前の会社では仕事の一部を担当するお手伝いという感じでしたが、サンコーでは、会社の経理一切を任されました。前例を踏襲しなくても結果を出せばよいという考え方だったので、自分で考えて改善することができました。サンコーに入社してからですね、仕事の醍醐味を味わえたのは。月末に集中して大変だった売上の計算を分散したり、複写式の伝票を導入したり、やりにくいと思ったことはどんどん変えました。

 会社にパソコンが導入されたのが、51歳の時。エクセルやパワーポイントも使いこなす必要があり学んできました。何かにぶつかったとき、何とかしようと考えてチャレンジするのが楽しい。だから長く続けてこられたのだと思います。今も、「泰子さんに聞けばわかるよ」と言われるようにデータ集計を自分なりに工夫しています。後輩の皆さんには、自立心を持ちなさいと言いたい。どんな仕事も自分が主人公になれば楽しく取り組めますよ。