
ESG経営推進本部
ダイバーシティ推進部長
横山 亜由美 氏

ESG経営推進本部
ダイバーシティ推進部
祝原 英美 氏
2014年にダイバーシティ推進室を設け、早くからLBGTQへの理解促進を進めてきた積水ハウス。ESG経営推進本部ダイバーシティ推進部の横山亜由美さん、祝原英美さんに、LBGTQに関する取り組みの経緯や課題、社内変化などを聞いた。

――2014年にダイバーシティ推進室が設けられ、早くからLGBTQをテーマに取り上げ啓発活動に取り組まれていますが、LGBTQの理解促進に取り組むきっかけをお教えください。
横山以前から各事業所や組織において、人権に関するさまざまなテーマについて学ぶ「ヒューマンリレーション研修」を行ってきました。その中で2014年から、LGBTQの理解促進をテーマに取り上げたのが始まりです。
背景にあるのは、”「わが家」を世界一 幸せな場所にする“という積水ハウスグループのグローバルビジョンです。ビジョンの実現のためには、まず従業員が幸せであることが大切であり、多様な人材が多様な働き方をして認められることが重要になってきます。その考えのもと、男性育休なども推進してきましたが、LGBTQへの理解促進もその流れの一環です。また、当社の物件に入居されるお客さまも多様化する中、従業員も多様性に理解がなければ対応が難しいという、事業に直結した背景もあります。
――LGBTQフレンドリーを進める社内の取り組みを具体的にお教えください。社内施策とあわせ、お客さま等社外に向けた取り組みもお聞かせください。
祝原まず社内の取り組みとしては、Ally(アライ:性的マイノリティを理解し、支援する人)を募り、Ally同士の交流の場として2023年に「S-Allyサークル」を立ち上げました。社内SNSのチャット機能を使ったコミュニティで、LGBTQに関する書籍やニュース、イベント等について情報交換をしています。メンバーは現在200人程度。Allyであることを示すステッカーをPCや携帯に貼ることで、自分がAllyだと表明できます。
また、昼休みを利用したランチケーションの場で、これまで5回ほどLGBTQをテーマに取り上げています。当事者であることをオープンにしている社員が、当事者としての思いを語ってくれたこともあります。そのような機会を通じて、心理的安全性の高い職場環境を作る努力をしています。
制度としては、2019年に「異性事実婚・同性パートナー人事登録制度」を設けました。事実婚またはパートナーが同性である従業員が、法律上の婚姻と同等に扱われ、結婚休暇、家族手当などの福利厚生を利用できるものです。カミングアウトするかどうかは個人の自由ですが、制度利用の際には、通常の制度の申請に比べて人の目に触れる機会が少なくなるよう配慮しています。
また当社グループ会社の積水ハウス不動産では、当社の賃貸物件を扱ってくださっている加盟店の不動産会社さまに向けたLGBTQ研修を行っています。以前、同性カップルのお二人が当社物件に入居を希望されたとき、加盟店で「友人同士での入居はできない」とお断りしたことがあり、その対応に厳しいお声をいただいたことが、研修ができたきっかけです。入居希望者にも多様な方がいらっしゃることを想定し、アンケートの性別や続柄の記載をはじめ、接客時に配慮すべき点などを伝えています。賃貸物件オーナーさまに対しても、積水ハウスグループとしての姿勢や取り組みをお伝えできるようにしています。
――取り組みを進めたことによる社内の変化、社外の反響をお教えください。
祝原当社は「Tokyo Pride 2025 Pride Parade & Festival」(NPO法人東京レインボープライド主催)などのプライド・パレードに参加していますが、社員の参加者が年々増加しているのは目に見える変化です。理解を深めたい人が当事者とともに参加し、コミュニケーションをとることで、多様性を認める風土醸成につながっていると感じます。
横山社外からの評価としては、「PRIDE指標*」において、最高位のゴールドを7年連続、社外との協業でLGBTQを推進する企業を表彰する「レインボー認定」を3年連続で受賞しています。
*一般社団法人work with Prideが2016年に策定した企業・団体などにおけるLGBTに関する取り組みを評価する指標
お客さまからの反響としては、先ほどの加盟店向けLGBTQ研修によって、同性カップルが入居できるよう、またカミングアウトにつながらない形で対応できるように工夫した結果、当社物件に入居したいという嬉しいお声もいただくようになりました。
祝原社内の声としては、「異性事実婚・同性パートナー人事登録制度」ができたときに、人事総務宛に匿名で当事者の社員から電話がありました。「自分はまだカミングアウトして制度を使う勇気はないが、会社の本気を感じた。会社を信じて、いつか安心してカミングアウトできるまで働き続けたい」というものでした。制度の利用数以前に、こういった姿勢を見せることに大きな意味があったと思います。
――取り組みを進めるうえで、難しかった点や感じている課題、また今後特に取り組んでいきたい点をお教えください。
祝原無関心層を巻き込んで「自分ごと」にしてもらうのは、難しい課題だと感じます。研修の担当部署に、毎年必ずLGBTQについては取り上げてほしいと伝え、理解を深める場を絶やさないようにしています。
積水ハウスでは、社長が「Ally宣言」を行ったり、役員が積極的にパレードに参加したりしています。トップのそういう姿勢を見る機会が多いので、従業員の理解も自ずと深まっていると感じています。
今後、特に力を入れていきたいことは、Allyの数を増やすことです。理解ある人が増えることが、当事者の方の安心につながり、ひいては誰もが働きやすい環境にもつながります。取り組みを絶やすことなく継続的に行っていくことの大切さを日々実感しています。

――LGBTQに取り組む企業にメッセージをお願いいたします。
横山まずは、できることから始めるのが大切だと感じています。その上で、他の会社と連帯して取り組みを進めることも大切です。
祝原他社さんとの連携としては、約50社からなる「ダイバーシティ西日本勉強会」に参加しています。その中でLGBTQの分科会が立ち上がり、講演会や映画上映会、パレード参加などの取り組みを進めています。当社では早くからトップが明確にLGBTQへの理解促進を表明していますが、他社の方の話を聞くと、トップコミットメントによって理解促進が加速したという話も聞きます。ダイバーシティ西日本勉強会のような組織に入ることで、D&I担当者として情報発信もしやすくなると思います。
横山D&Iの取り組みは、一社だけでできることには限りがあります。多様な働き方を推進しようとしても、お客さまや取引先に迷惑がかかると考えるとブレーキがかかってしまうこともありますので、推進するには社会を変えていく必要があります。思いを共にする色々な企業さんと学び合い、情報交換しながら、活動の輪を広げていきたいです。