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2025.7.29 What’s new

関西経済連合会 「人への投資」に関する報告書の公表について

 「人への投資」や人的資本経営への注目が集まる中、当会では、企業と個人が互いの成長にコミットするため、“見える化”を進める重要性に着目し、企業の取り組みの方向性を体系的に整理して「『人への投資』に関する報告書~企業と個人がともに成長する関係性の構築に向けて~」として取りまとめました。今月号ではその内容を紹介します。

現状認識

 働き方改革やコロナ禍の影響により、個人のキャリア観が変化し、一企業に依存しない多様なキャリア形成が広がっている。従来の長期雇用では、企業主導のキャリア形成が一般的だったが、現在は個人が主体的に能力向上をはかる動きが強まっており、企業はこうしたキャリア自律を支援する役割へと変化している。

 同時に、技術革新やグローバル化、DX・GXへの対応など、経営環境も急速に変化しており、企業には将来の予測困難な変化に対して、機動的に経営戦略を見直すことが求められている。さらに、人口減少に伴い労働市場の多様化が進む中で、多様な人材の力を引き出す組織づくりが一層重要となっている。

企業と個人がともに成長する関係性の構築に向けて

 こうした状況をふまえると、企業には市場や社会の変化に対応するため、個々の能力を活かす人材マネジメントへの転換、経営戦略と連動した人材戦略の構築が求められている。そのためには、多様なキャリアの選択肢を用意し、必要なスキルや求める人材像を明確にすることが重要である。

 一方、個人にはキャリア自律の意識が求められ、自身の強みや目標を明確にし、企業の理念や戦略、事業の方向性を理解した上で継続的に学び、変化に適応する力が必要となる。

 企業事例をもとに取り組みを整理していくと、共通項として「①企業の“見える化”:企業から個人へのキャリア形成につながる情報の発信」「②個人の“見える化”:個人のキャリア観・能力等を把握する仕組みの整備」「③多様な個に応じた的確な成長機会の提供」という3つの取り組み要素がポイントとして浮かび上がった。

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企業と個人が互いの成長にコミットするための3つの取り組み要素

取り組み要素① 「企業の“見える化”:企業から個人へのキャリア形成につながる情報の発信」

 個人が自身のキャリア形成の見通しを立てる際、企業がどのような理念や経営戦略のもとで事業を進めているのかを理解することが重要となる。また、職務や部門・部署などに関する情報を多様な手段を用いて、明確に発信することにより、自社で叶えられる将来のキャリアイメージの明確化につながる。

取り組み要素② 「個人の“見える化”:個人のキャリア観・能力等を把握する仕組みの整備」

 個人のキャリア観が変化・多様化する中、企業においては、個人のキャリア志向やスキル、強みなどを理解することで、適性に応じた職務や役割を与えることができ、組織力の向上につながる。さらに、個人からの自発的な情報発信に頼るのではなく、様々な機会やツールを通じて、多様な個人のキャリア志向やスキル、強みなどを把握していく仕組みを整備することが重要となる。

取り組み要素③ 「多様な個に応じた的確な成長機会の提供」

 企業と個人の“見える化”を進めた上で、企業は提示したキャリアパスを実現するための支援や必要なスキルに対する学びの機会提供などを進めていく必要がある。また、個人の主体性やそれぞれの能力・強みが発揮できるよう、個人の多様なキャリア志向やライフステージに応じた適切な支援を進めていくことが重要となる。

各社の取り組み

事例1:多様な個の成長を促す組織づくり

(取り組み要素① 企業の“見える化”)

 従業員向けに自律的キャリア形成支援サイトを開設。各部門の紹介とともに、キャリアステップのモデルケースや実際の社員の活躍事例を発信することで、社内のキャリアパスについてより具体的な情報を伝えており、従業員のキャリアデザインの検討や上司との面談において有用なものになっている。

(取り組み要素② 個人の“見える化”)

 面談では、従業員それぞれの強みや啓発すべき点、キャリアプランを記載した「キャリアデザインシート」に基づき、各人のキャリアについての考え方を上司と部下の間で共有する。また、上記自律的キャリア形成支援サイトを通じ、部下の属性や世代、キャリアタイプに応じて、上司向けの面談サポートツールが提供されている。

(取り組み要素③ 多様な個に応じた的確な成長機会の提供)

 育成の面では、個人の主体的な学びにつながるe-ラーニングによる学習プラットフォームの導入を進めるとともに、配置の面でも、個人が自発的にチャレンジできる社内公募制度を拡充するなど、個人のキャリア自律に基づく人材マネジメントの強化を進め、「個の能力」の向上をはかっている。

事例2:スキル定義に基づくスキルアセスメントと自律的な学びの促進

(取り組み要素① 企業の“見える化”)

 人材ポートフォリオの構築に向けて、社内で一般的に求められるスキルと職種ごとに必要なスキルの2種類について、経験や行動、専門資格などのスキル要件および求められるレベルを定義し、社内に公開している。

(取り組み要素② 個人の“見える化”)

 年に1回、定義されたスキルに基づき従業員一人ひとりの習熟度を評価するスキルアセスメントを実施し、従業員のスキルレベル(強みとチャレンジポイントなど)の可視化をはかっている。

 また、上司との面談においては、スキルの棚卸しや将来の学習目標、興味のある役割・職種などを考えて記載するキャリアデザインシートを活用し、キャリア開発を軸にした自律型人材の育成に取り組んでいる。

(取り組み要素③ 多様な個に応じた的確な成長機会の提供)

 自身の将来のキャリアを見据えて学びたいことをキャリアデザインシートに記載することを唯一の条件として教育費支援を行う「自己投資支援制度」を通じて、従業員の自律的な学びを支援している。

 また、若年層の抜てきや個人の挑戦・努力の促進につながる形で人事制度の改定を行っている。

事例3:職務と人財の「見える化」によるジョブ型人財マネジメント

(取り組み要素① 企業の“見える化”)

 ジョブ型人財マネジメントのもと、「『職務』の見える化」の一環である職務定義書を個々のポジションごとに整備することにより、キャリア機会や成長目標を明示するとともに、主体的なキャリアプラン構築、ひいてはリスキルの実行をはかっている。

(取り組み要素② 個人の“見える化”)

 一方、「『人財』の見える化」の一環である人財マネジメント統合プラットフォームを通じて、従業員自身によるキャリアに関する情報の棚卸しとともに、上長と部下のコミュニケーションの活性化につなげている。

(取り組み要素③ 多様な個に応じた的確な成長機会の提供)

 公募制度の応募資格の緩和を進め、異動の円滑化をはかるとともに、ポジションによってはキャリア採用も同時に募集をかけるなど、従業員のキャリア機会の充実と会社としての最適な人財獲得・配置の両立につなげている。

詳細はこちら

  • 「人への投資」に関する報告書~企業と個人がともに成長する関係性の構築に向けて~ (250530houkokusho1.pdf
  • 「人への投資」に関する報告書 企業事例集 (250530houkokusho0.pdf