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Kansai D&I News
2025.11.28 What’s new

関西経済連合会 2025年度「D&Iに関するアンケート調査」の結果について

 当会で行った2025年度「D&Iに関するアンケート調査」の結果をもとに、女性管理職比率や男性の育休取得率の現状などについて紹介します。

結果の概要

 当会は、会員企業におけるD&Iの状況を確認し、D&I推進の現状や伸び率などを提示して取り組みの参考としていただくため、アンケート調査を実施している。本年度は7月から9月にかけて会員企業約1,110社を対象に行い、うち185社から回答を得た。

 調査結果を、当会で2021年11月に策定した「関西D&Iビジョン」で示す項目に沿ってまとめる。関西D&Iビジョンでは、下図左側の通り、基本理念として「多様な人材の活躍の場をひろげる」、「多様な価値観を企業の成長に取り込む」の2つと、4つのアクションを掲げている。そして、基本理念とアクションに対応する形で下図右側の通り、目指すべき企業の姿を、女性採用比率や女性管理職比率、男性育休取得率といった数値や、従業員意識実態調査の実施、専門部署等の設置といった定性目標とともに定めている。

イメージ画像

(※)関経連D&Iビジョンに関する詳細はこちら

 調査結果の中から、D&Iビジョンで示した項目の結果を抽出し、以下にまとめる。

直近3年間の女性採用比率

 「直近3年間の女性採用比率」は35.9%と、関西D&Iビジョンを策定した2021年度から比較して1.9pt上昇。非製造業は関西D&Iビジョンに掲げた40% を前年度に引き続き達成している。

図1

女性管理職比率

 女性管理職比率(管理職に占める女性の割合)は、11.0%と前年度より0.8pt上昇、2021年度から2.7pt上昇し、順調に上昇を続けている。規模別にみると、従業員301~3,000人の企業の女性管理職比率は他の規模の企業と比較して低い傾向が続くものの、足もとの伸びは前年度比+1.5ptと、他の規模の企業よりも高い伸びが見られる。

図2

【参考:令和6年度雇用均等基本調査結果(女性管理職比率)】

 令和6年度雇用均等基本調査では、課長相当職以上の、管理職に占める女性の割合は13.1%。当会のD&Iに関するアンケート調査結果は、全国平均13.1%に対して2.1ptのマイナスとなった。

 ただし、3年間の推移をみると、関経連調査の伸び(+2.0pt)は全国調査(+0.4pt)を上回っている。

図3

※令和6年度雇用均等基本調査結果の詳細は以下をご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r06/06.pdf

男性の育児休業取得率

 「男性の育児休業取得率」は53.2%と2021年度から35.1pt上昇し、大幅な上昇が続いている。規模別にみると、3,000人超の企業が73.8%と他の規模の企業よりも高い傾向が続いている。また、300人以下の企業における男性育休取得率は35.3%と他の規模の企業を下回るものの、足もとで前年度比+7.5ptと高い伸びが見られる。

図4

従業員意識実態調査の実施

 社員の働きやすさなどに関する「従業員意識実態調査」の実施率は、73.0%と、前年度比6.5pt上昇。2022年度から+20.3ptと、順調に上昇している。規模別にみると、300人以下の企業で35.5%と実施率が低い一方で、3,000人超の企業では全ての企業が従業員意識実態調査を実施している。

図5

専門部署等の設置

 D&I推進の専門部署等の設置率は、47.0%と前年度から0.8pt上昇。2021年度から6.4pt上昇した。規模別にみると、3,000人超の企業では8割以上が専門部署を設置しているものの、300人以下の企業の設置率は2割を切っている。

図6

4つのアクションの取り組み実施率

 D&Iビジョンをもとに、「1.女性のキャリア形成支援」「2.仕事と家庭の両立支援」「3.風通しのよい風土の醸成」「4.トップコミットメントの浸透」の4つのアクションごとの取り組み状況を確認した。

図7

 全体として4つのアクション全てで取り組み実施率が上昇している。3000人超の企業中心に取り組みが進んでいるが、301~3000人、300人以下の企業でも徐々に取り組みが広がってきている。

 「1.女性のキャリア形成支援」の取り組みについては他の3つのアクションと比較して取り組み実施率が低く、23年度から実施率も横ばい。今後取り組みの余地があると考えられる。「2.仕事と家庭の両立支援」の取り組み実施率は全ての従業員規模の企業で上昇を続けている。「3.風通しのよい風土の醸成」の取り組みは、これまで相対的に取り組み実施率が低かった3,000人以下の企業で取り組み実施率が上昇している。「4.トップコミットメントの浸透」の取り組みは3,000人超の企業を中心に実施が進んでいる。

参考:トップコミットメントの浸透に向けて

 D&Iガイドラインでは、「D&Iを推進する」というトップコミットメントを浸透させるためには、下図に示した4つの要素からなるプロセスが必要であることを示している。それぞれのプロセスごとの取り組み実施状況をアンケートで確認したところ、「01 トップコミットメントの表明」「02 D&I推進の全社方針の策定」までは6割程度の企業が実施していたが、「03 各部門・拠点への推進計画の展開」「04 計画の進捗評価とフォロー」まで実施している企業は3割以下にとどまった。

図8

まとめ

 2021年の関西D&Iビジョン策定以降、ビジョンの目指すべき姿に掲げた各項目の数値および4つのアクションごとの取り組み実施率は上昇を続けており、会員企業におけるD&I推進の着実な進捗がうかがえる。

図10

 ただし、「女性のキャリア形成支援」については、他のアクションと比較して取り組みの余地が大きい。女性本人向けの制度の実施率は高いものの、経営幹部が関与する制度など、役員、上司等が関わる取り組みの実施率が低い状況が続いている。

 規模別にみると、3,000人超の企業中心に取り組みが進められている状況は変わらない一方、これまで実施率が相対的に低かった3,000人以下の企業においても「仕事と家庭の両立支援」「風通しのよい風土の醸成」に向けた取り組みの実施率が上昇しており、従業員規模の小さな企業へも取り組みが広がっている。

 「トップコミットメントの浸透」では、D&I推進方針の社外への公表や経営戦略への位置づけまでは多くの企業で行われているが、経営戦略に位置付けた推進方針を各部門へ展開し、その進捗評価・フォローを行うまでには至っていない企業が多い。

今回調査で明らかになった課題もふまえ、今後当会D&I専門委員会において、さらなるD&I推進に向けた取り組みを進める。