当会が実施した2025年度「D&Iに関するアンケート調査」のうち、外国人社員の活躍に関する調査結果に焦点を当て、その現状や課題などについてご紹介します。
はじめに
当会は、会員企業におけるD&Iの状況を把握するとともに、D&I推進の現状や進捗状況を可視化し、今後の取り組みの参考としていただくことを目的に、アンケート調査を実施している。2025年度は、7月から9月にかけて会員企業約1,110社を対象に行い、185社から回答を得た。
これまで当会では、2021年11月に策定した「関西D&Iビジョン」において具体的な目標を設定した項目を中心に、女性管理職比率や男性の育休取得率などの結果を公表してきた。
一方で、国籍に関わらず社員が活躍できる環境整備も重要なテーマであり、外国人社員の活躍状況についても設問を設けている。本記事では、外国人社員に関する結果に焦点を当てて整理したので、ご紹介したい。
女性の活躍に関する調査結果は、2025年11月号にて紹介しています。
https://www.kankeiren.or.jp/diversity-inclusion/di-news/202511_02/
結果概要
(1)外国人社員の現状および今後の見通し
外国人社員の比率 ※複数回答
外国人社員の割合が社員全体の1割未満の企業は、全体の9割超を占めている。一方、1割以上2割未満の企業は4%、2割超の企業は3%程度となっている。
5年前と比較すると、外国人社員の割合が社員全体の1割以上の企業は、2倍以上に増加している。

外国人社員の在留資格の種類 ※複数回答
在籍する外国人社員の在留資格について、該当するものを聞いたところ、「技術・人文知識・国際業務」が5割超となっており、「高度専門職」も約3割となっている。
5年前と比較すると、「高度専門職」の割合が増加しており、高度な専門性を活かして活躍する外国人社員が増加していることが伺える。

外国人社員の所属部門 ※複数回答
在籍する外国人社員の所属部門について、該当するものを聞いたところ、「国内営業部門」が5割超となっているほか、「海外営業部門」や「一般管理部門」も5割近くとなっている。これに続き、「研究・開発部門」「IT・情報システム部門」「現業職(製造ライン、建設現場等)」はいずれも3割を超えている。
5年前と比較すると、海外営業などグローバルな専門性を活かす部門にとどまらず、「研究・開発部門」や「IT・情報システム部門」など、より幅広い分野で外国人社員が活躍する傾向が見られる。

外国人社員採用のねらい・期待すること ※複数回答
外国人社員を採用する目的としては、「国籍に関係なく、優秀な人材を確保するため」が約7割と最も多く、次いで「多様性とイノベーション力の向上による社内活性化のため」が約5割となっている。
5年前と比較すると、専門分野の人材としての採用や、人手不足を背景とした外国人社員の採用も増えているほか、外国人社員をダイバーシティ推進に資する存在として位置付ける企業の割合もわずかに増加している。

外国人社員の採用に関する今後の見通し
今後の外国人社員の採用について、「現状と同程度を維持する見込み」と回答した企業が全体の7割を占めている。一方で、「増加する見込み」と回答した企業も全体の4分の1となっている。

「現状と同程度を維持する見込み」とした企業の回答理由(自由記述)
- 外国人の採用枠を特に設けておらず、国籍に関わらず優秀な人材を採用しているため。
- 国内/海外問わず、国籍に特化した採用活動を行っていない。 現時点では大幅な外国籍採用の増減は特段想定していないため。
- 要員計画や、採用計画等において、在留資格によって区分した計画自体が存在しないため。
- 国内事業が中心であり、海外事業についても、現状では外国人の方でなければできない仕事ではないため。
- 経済状況や外的環境にフレキシブルに合わせているので状況が読めないため。
- 以前より必要に応じて随時採用を行っているため。
<参考>
部科学省は2024年11月、2050年には国内の大学入学者が42万人に減少し、入学定員を現状のまま維持した場合、約3割が充足されなくなるとの試算をまとめた。この試算をもとに、進学者に占める留学生の割合を算出すると、外国人留学生数が政府目標に沿って増加すると仮定した場合、2050年には留学生比率が10%に達する見込みとなる。

(2)在留資格に関する課題 ※複数回答
外国人社員の採用や定着にあたり、在留資格の面で課題を感じているかを聞いたところ、「手続きが煩雑」「制度が複雑」と回答した企業はいずれも3割超となっている。また、「対象が限定的」と回答した企業は14.0%となっている。いずれか一つでも該当すると回答した企業の割合は約6割となっており、多くの企業が在留資格に関して何らかの課題を認識していることが明らかとなった。

(3)共生に向けた取り組み
外国人社員を対象とした日本語教育や、職場における異文化理解の促進など、共生に向けた取り組みについては、7割を超える企業が「実施していない」と回答した。一方で、大企業では3割を超える企業が何らかの取り組みを行っており、企業規模による対応状況の違いが見られた。
具体的な企業の取り組みとしては、外国人社員に対する言語・文化に関する研修などの支援や、外国人社員とともに働く日本人社員向けにハンドブックを配付する取り組みなどが挙げられた。

企業から寄せられた主な意見(自由記述)
- 海外からの出向者、海外大学からのインターンシップ生含め、外国籍社員と一緒に働く部署の上司、同僚、本人を対象とした異文化理解プログラムを実施。
- 外国人社員同士の交流会を開催し、開催状況を社内ポータルに発信・外国人社員の受け入れに対して、共生・人権推進の観点から、人事担当者や受け入れ先の上長に対して、ガイドラインを作成しているほか、全社員に対しても、リーフレットを発信し、多文化共生を進めている。
- 異文化の中で求められる行動や日本の企業文化を学び、外国籍社員が当社で働くうえでの一助となる価値観や知識を習得する研修を、入社1年目の外国籍従業員と教育主任の2人1組で受講してもらう。
- 日本語で作成した伝達内容の原稿を事前に多言語に翻訳し、それらの翻訳文章を朝礼時に大画面で同時表示するシステム「翻訳サイネージ」を活用し、言語が異なる多様な国籍の従業員に対して、それぞれの母国語で朝礼の内容を正確に伝達している。
- 海外地区社員を招いて職場見学やディスカッション、日本地区社員とともに企画をするイベントを実施。また、日本へ派遣される外国籍社員同士の横のつながりや外国籍を含む国内採用社員との交流を広げるための場機会を整えている。
- 外国人社員家族見学会、DE&Iワークショップ、座禅体験などのイベントを年1回程度の頻度で実施。外国人社員の入社時には、本人およびその上司に対して異文化コミュニケーション研修を実施。
- 外国人社員の入社3年目までの方に対して交流会を実施、また希望者に対して会社負担で日本語ライティングの通信講座を実施。
- 日本語教育の実施、受け入れ部署向けのハンドブック(外国籍社員と仕事をするうえでの留意点・ヒント等)の作成。
- 社内からの各種情報発信や、特に工場においては安全に関するアナウンスを複数言語で実施。
- 忘年会やお花見、観光ツアーなどのイベントを事業所ごとに計画をたてて実施している。
まとめ
今回の調査によって、企業における外国人社員の採用規模は5年前と比べて拡大しており、今後もその流れが続くとともに、活躍の場が広がっていることが明らかになった。
一方で、在留資格に関する制度面の課題が依然として存在するほか、日本語教育や異文化理解の促進など、共生に向けた取り組みについては、さらなる改善の余地があることも分かった。
当会では、こうした調査結果もふまえ、企業に求められる対応と、制度面や共生に向けて政府に求める政策対応の二つの軸で提言を整理し、2025年12月に公表した。
(参考)関経連「外国人材の受け入れ・活躍および地域社会との共生に関する提言」
https://www.kankeiren.or.jp/material/251224release.pdf
2027年度からは新たに育成就労制度が導入される予定であり、制度動向によって今後の課題も変化していくことが想定される。外国人政策は、企業だけでなく、国や自治体など多様なステークホルダーと密接にかかわる分野でもある。当会としては、引き続き関係者と連携しながら、機運の醸成や具体的施策への関与を通じて、多様な人材が活躍できる環境づくりに取り組んでいきたい。