
神戸製鋼所
人事労政部 D&I・労政グループ
担当課長 田澤 知子さん
加藤 彩耶香さん
神戸製鋼所ではD&I推進の一環として、LGBTに関する理解促進などの取り組みにも力を注いでいる。人事労政部 D&I・労政グループ担当課長の田澤知子さん、加藤彩耶香さんに話を聞いた。

――LGBTの理解促進に取り組むきっかけをお教えください。
田澤当社は創業から120年の歴史の中で、素材系・機械系・電力の3つの事業を柱に、それぞれの分野の技術をかけ合わせて新たなソリューションを生み出してきました。その原動力となっているのは人材であり、多様な経験や価値観をもつ社員一人ひとりです。
こうした考えのもと、当社では人的資本経営の観点から、多様な人材がそれぞれの経験や強みを活かしながら安心して働き、力を発揮できる環境づくりを人材戦略の重要な柱の一つとしています。多様な社員の力が最大限発揮されることが、組織の持続的成長や新たな価値創出につながると考え、D&Iの推進に取り組んでいます。
当社のD&I推進は女性活躍から始まりましたが、現在は多様性をより広義にとらえ、年齢や役職などにとらわれず互いを尊重し合える組織づくりを進めています。LGBTに関する取り組みもその一環であり、当事者を含めたすべての社員が働きやすい職場環境の整備や、LGBTへの理解促進等を行っています。
――具体的な取り組み内容、近年特に力を入れていることをお教えください。
加藤当社では、すべての社員が安心して働ける職場環境の実現を目指し、LGBTに関する理解促進と制度整備を両輪で進めています。具体的には、2022年に同性パートナーを法律上の配偶者と同等に扱い、社内の各種制度等を利用可能とする「KOBELCOファミリーシップ制度」を導入しました。また、制度設計と並行して新入社員・中途採用者を含む全社員を対象にLGBTに関する教育を継続的に行っています。さらに、外部NPO団体等とも連携し、LGBT ALLY*を増やす取り組みも推進してきました。制度整備と理解促進を並行して進めることで、形式的な対応にとどまらず実効性を高めることを意識しています。
※LGBT ALLY(アライ)…同盟・支援を意味する「ALLY」が語源であり、LGBTに関する課題に対して自分事として主体的に行動をする人を指す
――コベルコ神戸スティーラーズとコラボし、LGBT ALLYに関する情報提供を行っていますが、この取り組みのきっかけや背景をお教えください。
加藤当社のALLY活動は社内を中心に展開してきましたが、社員の家族やパートナー、地域社会など、より広いステークホルダーの皆様まで広げていくことに課題がありました。そこで、ジャパンラグビー リーグワンに参戦する当社のラグビーチーム「コベルコ神戸スティーラーズ」と連携し、社会への発信力を高める取り組みとして開始しました。
試合会場でLGBT ALLYに関する情報提供や呼びかけを目的とした企業ブースを設置し、来場者へレインボーフラッグやLGBTに関する基礎情報を記載したチラシを配布するといった活動をしています。イベントには社内のALLYの有志もボランティアとして参加しています。活動は5年目を迎え、社内のALLYは850名を超えました。イベントに毎年参加してくれる社員や、ブースに立ち寄ってくれるファンの方も年々増えている実感があります。コベルコ神戸スティーラーズのSNSを通じた広がり等も含め、当社単独では伝えきれない幅広い層に向けて働きかけができることにも意義があると感じています。これらの活動については、職場におけるLGBTなどへの取り組みに関する外部認証であるPRIDE指標「ゴールド」を5年連続で受賞、セクターを超えた協働を推進する企業を表彰する「レインボー認定」を2年連続で受賞するなど、社外からの評価もいただいています。
田澤当社のD&Iの活動の方針は、多様な人材が全員活躍できる職場環境を実現することです。社員一人ひとりが安心して働ける環境づくりのために、まずは社内に向けた啓発や情報発信が大切であると考えています。その上で、会社の姿勢を社外にも明確に発信することは、当事者である社員の安心感や、会社の魅力度の向上にもつながるのではないかと思います。
――LGBT ALLYに関する情報提供やD&I全般に関する取り組みを進めるうえで難しかった点や課題をお教えください。
田澤LGBTに関する取り組みは、外部のNPO団体や、先行して取り組みを進めている企業にも知恵を借りながら、手探りで進めてきたというのが実情です。LGBTと一口に言っても、抱える課題やニーズは多様であり、制度面や設備面の整備だけで解決できるものではありません。一律対応ではなく、一人ひとりの状況に応じて丁寧に向き合い、対応する必要があると考えています。一律対応が難しい領域であるからこそ、継続的に改善を重ねていくことが重要だと認識しています。
2014年度、当社内にD&Iの専任部署ができた当時は、そもそも「ダイバーシティってなに?」という人が多い状況でしたが、粘り強く啓発や施策を積み重ねることで、徐々に理解が浸透してきていると感じています。
――今後力を入れていきたいこと、抱負をお教えください。
田澤これまで女性社員、外国籍社員、障がいのある社員など、特定の属性にスポットを当てた取り組みを進め、職場風土の改善や働きやすさの向上といった一定の成果をあげてきたと受け止めています。
今後は、こうした取り組みを土台としつつ、属性に関係なく多様な人材が互いの意見や価値観を尊重し合える組織風土の醸成にさらに力を入れていきたいと考えています。
当社は多様な事業を展開しており、それらをかけ合わせることで新たな価値を創出してきました。その原動力となるのは、多様な人材の活躍です。D&I推進を通じて、多様な視点を活かした課題解決やイノベーションを生み出し、最終的には事業価値の創出へとつなげていきたいと考えています。