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Kansai D&I News
2026.9.4 企業の取り組み最前線

企業の垣根を越え、女性の活躍を支援 「クロスメンタリング」で広がるキャリアの可能性
――SCREENホールディングス

SCREENホールディングス 人財戦略本部 人事室長	人財戦略本部 人事室長 西田 晴美さん

SCREENホールディングス
人財戦略本部 人事室長

西田 晴美さん

SCREENホールディングスでは、女性のキャリア形成支援の一環として、メンター(支援者、助言者)とメンティー(支援・助言を受ける立場)が他企業同士となる組み合わせで行う企業横断型のキャリア形成支援「クロスメンタリング」を実施している。人財戦略本部 人事室長の西田晴美さんに、取り組みの目的や概要を聞いた。

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――貴社のDE&I推進の基本的な考え方をお教えください。

 当社では社員の皆さんが働きやすい環境を整えるため、フレックス制度をはじめとしてさまざまな制度を充実させてきました。エレクトロニクス分野のメーカーという特性もあり、女性社員の比率が11〜12%と少ないなかで、女性活躍推進に取り組んできました。しかし、働き続けられる環境と、挑戦をし続けられる環境というのは違うと認識しています。組織全体として、皆が挑戦し続けられる環境をどのように作っていくかが重要というのが、当社のDE&I推進の基本的な考え方です。スピード感が求められる業界の中で選ばれる会社になっていくためにも、皆が挑戦を続けられる土壌が必要だと考えています。

――クロスメンタリングに取り組むきっかけ、背景をお教えください。

 クロスメンタリングとは、メンターとメンティーが他企業同士となる組み合わせでメンタリングを行う、キャリア形成支援の取り組みです。パーソルテンプスタッフに運営を委託し、当社とヤンマーホールディングスの2社で、2025年5月から約9カ月間にわたる企業横断型「クロスメンタリング」のプログラムを行いました。2026年5月からは2期目として、カナデビアも加わった3社で実施しています。

 当社がクロスメンタリングに取り組むきっかけの一つは、女性管理職比率に課題を感じていたことです。昨年度の女性管理職比率は5.1%と、まだまだ低い状況です。これまで上長向けのアンコンシャスバイアス研修や女性向けのキャリア研修などは行っていましたが、「意識を変えてください」「チャレンジしてください」という一方的なメッセージになってしまう面があったと思います。人それぞれに状況が異なる中で、画一的な発信をしてもあまり効果はありません。特に当社では女性のロールモデルが少なく、本当に女性に活躍してもらうためには、もっと一人ひとりに向き合った取り組みが必要と考え、クロスメンタリングの手法に注目しました。

――クロスメンタリングの目的と取り組み概要をお教えください。

 大きな目的は女性活躍推進や女性のキャリア形成支援ですが、一人ひとりの女性社員が自分のキャリアを考えるきっかけを作ることが最も大切だと考えました。将来のキャリアは、管理職に限りません。しかし、管理職への可能性を考える機会をこれまで会社として十分に提供できていなかったのではないかと反省点がありました。経験豊富なメンターとのメンタリングを通じて、挑戦したいと思った女性が一歩踏み出せるように後押ししたいと考えました。

 クロスメンタリングでは、各社がメンター・メンティーをそれぞれ出し合います。メンターは管理職など一定の経験がある人から、メンティーは次に管理職をめざす年齢層や立ち位置にいる方から選ばれます。異なる会社同士でメンター・メンティーを組み合わせますが、このマッチングが最も肝となる部分です。まずは思考や仕事の進め方などを類型化して、講師を務めるTWINKLE STARS 松川倫子氏とパーソルテンプスタッフの独自メソッドを基に、デジタルマッチングを行います。その後、各社の人事担当者が集まり、それぞれが把握している情報を加味して、マッチングの精度をさらに高めます。第1期では、当社とヤンマーホールディングスの社員計26名(メンター13名、メンティー13名)が参加し、計5回のメンタリングのほか、メンターフォローアップ研修などを含む約9カ月間のプログラムを実施しました。

 「なぜ自社内ではできないのか」という意見もありますが、業務上のつながりがあるかもしれない人に悩みや本音を話すのは、意外に難しいものです。メンターとなる人も、自社のさまざまな事情を無意識に考慮してアドバイスしてしまうかもしれません。関西のB to Bメーカーで上場企業という共通点があるので、互いの状況を理解しやすい面はありつつも、自社組織のバックグラウンドから離れた関係性の中だからこそ、本音で対話でき、気づきが得られる部分があります。

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――クロスメンタリングを実施したことで、社員の意識や職場でのコミュニケーション等、組織内でどのような変化がありましたか。

 参加者へのアンケートでは、「自分のキャリアの方向性について気づきを得られた」、「方向性が定まった」といった声が多く聞かれました。マネジメント職に進むと決めた人もいれば、自分はスペシャリストでいくと決めた人もいます。これまで劣等感を抱いていたことを「課題」として認識でき、対策が打てるようになったという声もありました。例えば、同期が海外赴任する中、子どもが小さくて行けないことに劣等感を感じていた女性が、短期の出張から始めてみようと意識が変わり、実際に出張するようになったという変化もありました。メンバーの中から、管理職登用された人も2名います。最初は参加に疑問を感じていたメンティーが、最後には「すごく助けられた」と話していたのも印象的でした。

――DE&Iや女性活躍推進に関し、課題と今後力を入れていきたいことをお教えください。

 クロスメンタリングの結果や各自の気づきを現場にどのように落とし込んでいくのか、社内でどういった制度・仕組みを実装していくかが課題です。DE&Iの取り組みを個々の変化である「点」から組織で取り組む「面」に変えていかなければならないと感じています。

 また、人事として本当にやらなければならないのは、クロスメンタリングにおいてもそうですが、一人ひとりの社員ときちんと向き合うことだと考えています。女性活躍のロールモデルが少ない中、挑戦を本人の勇気だけに任せないことが大事です。人事でも、管理職に進む方にはその後押しを行い、管理職以外をめざしたいと思ったときには別の道が開けるよう、個々のキャリアの方向性と丁寧に向き合い、上長との話し合いの機会を設けるなどサポートしていきます。

――DE&I推進に関し、今後の展望、抱負をお教えください。

 これまで女性活躍推進にフォーカスした取り組みを中心に行ってきましたが、当社のDE&I推進の取り組み全体については積極的に発信できていませんでした。そのため、社内アンケートで「DE&Iという言葉について、あなたの認識に最も近いものを選んでください」という質問に対し、「これまで意識したことはなかった」と回答した方が40%に上りました。まずは、DE&Iについて社内の共通認識と理解を広げるところがファーストステップです。その際、単に社会的要請だから取り組んでくださいと言っても響かないでしょう。DE&Iの考え方は、社員の皆さんの活躍や、生産性向上・エンゲージメント向上のための「HOW」なのだと伝えていきたいです。

 DE&I推進に一から取り組むのは大変ですが、これまで行ってきたリーダーシップ研修をインクルージョン型のものに変えるなど、今までの施策をベースにして取り組める部分もあります。また組織的な動きのためには、各社員、特に管理職の業務に余白が必要です。どのような業務推進体制をとるか、人事施策から全体施策への接続といった面も課題です。そういった課題に取り組みながら、DE&Iの考え方を浸透させ、育てていきたいです。

 2026年4月入社の新卒採用でも女性比率は20%を超えており、女性は今後もどんどん増えていくと思われます。女性活躍が当たり前になり、外国籍の方の活躍などを含め、次の段階のインクルージョンに進んでいければと思います。