関西経済連合会(以下、当会)は、2025年12月24日に「外国人材の受け入れ・活躍および地域社会との共生に関する提言」を公表した。
当会は、外国人社員の活躍において企業が果たす役割も重要と考え、外国人材を含む多様な人材のさらなる活躍の実現に向け、本提言の基本的な考え方に沿って取り組む先進企業を取材し、その取り組みを10月号から全3回にわたって紹介する。
企業に求められる対応
- 1.外国人材のキャリア観の違いへの対応
- 2.日本人社員・外国人社員双方への異文化理解の促進
- 3.帯同家族が安心して生活できる地域社会と連携した環境の整備
外国人材のキャリア観の違いへの対応
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1.外国人材のキャリア観の違いへの対応
●外国人材…自身の価値・将来のキャリアを重視する傾向
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●企業に求められる対応
- キャリアパスを可視化
- 職務・役割を明確化
- 一人ひとりのキャリアに寄り添う
➡ 外国人材のモチベーション向上・早期離職の防止へ
提言の詳細はこちら
【注目企業インタビュー】キャリア自立を促すジョブ型人材マネジメントシステムが国境を越えた人材育成に繫がる
――シスメックス
シスメックス
人事本部人事部長
宮﨑愼一さん
シスメックス
人事本部人材開発部長
本庄大介さん
世界各国で事業を展開する医療機器・診断薬メーカーのシスメックス。今回外国人材のキャリア観の違いに着目した事例として、グローバル共通のジョブ型人材マネジメントシステムの取り組み内容や、外国人材のキャリア観の違いへの対応について、人事本部 人事部長の宮﨑愼一さん、人事本部 人材開発部長の本庄大介さんに話を聞いた。
――グローバルな視点で人材育成や人材活躍を推進するため、人材マネジメントの変革に取り組まれたとのことですが、その背景についてお教えください。
宮﨑当社では、以前から売上の8〜9割近くを海外での販売が占めています。研究開発・生産の拠点は日本にありますが、世界各地の海外子会社で販売・アフターサービスに従事する社員の存在が重要です。日本では従来、職能型・メンバーシップ型の採用や育成を行ってきました。それに対し、海外の社員はジョブ型志向で、自身の専門性を強みに仕事をします。日本本社の社員も海外勢と対等に仕事を進めていくには、個人の専門性を活かすことが欠かせません。
また、世界の各拠点で人事制度や評価の仕組みがバラバラだと一体感を持って仕事が進められないという状況をふまえ、2020年に日本の人事制度を、海外のスタンダードに寄せた新たな人事制度に変更しました。
――グローバル共通のジョブ型人材マネジメントシステムの概要をお教えください。
宮﨑グローバル共通での基本的な人材マネジメントの考え方を、ジョブ型に統一しました。仕事によって求められる専門性や責任が異なり、それに伴って処遇も変わるというものです。世界各国に全体で約1万2千人の社員がいますが、そのうち一定のポジションから上の幹部職の登用については本社の承認を前提とし、昇給などの処遇も本社のガバナンスのもとで管理します。ただし国や地域によって法律や賃金レベル等は異なるので、他のポジションについては各国・各地域の指針に従った運用になります。もちろん日本についても同様で、一般社員から幹部職まで、基本的な考え方をジョブ型に変えました。
本庄職能型の終身雇用では、「この人はそろそろ課長に」といった感じで会社側が社員にポジションを与えていく形でした。それに対してジョブ型は、仕事を起点として「この仕事をするにはこのスキルを持った人が必要」という考え方であり、スキル管理が非常に重要です。日本本社でも、スキルの定義やルールの運用を、試行錯誤しながら進めています。現状では、スキルを詳細に定義して厳密に運用することまではしておらず、どの仕事にも必要とされる能力やビジネススキルをまとめた「グローバル・リーダーシップ・コンピテンシー」を採用しビジネススキルの基本的な水準をグローバル共通で設定しました。制度を変えたことによるメリットも多くあります。例えば、ジョブポスティング(社内公募制度)では、空いているポジションに自らチャレンジし、希望する仕事に就くことで、モチベーションの向上にもつながっています。
また、新入社員に対して各部門がプレゼンテーションを行い、新入社員が希望する部署とのマッチングを行う仕組みも導入しています。配属時に自分で希望したという背景があるため、初めての仕事に対し「思っていた仕事と違う」と感じることも少なくなりました。各部門も、新入社員に選んでもらうために、どのように仕事の魅力を伝えるかを工夫するようになっています。
さらに、本人の希望を確認せずに異動させることをなくし、異動の際には事前に本人と話す場を設けるなど、本人の意思を尊重した戦略的な人事を実践しています。
――グローバル共通のジョブ型人材マネジメントシステムの設計・導入にあたり苦労した点、工夫した点をお教えください。
本庄各国で文化・慣習や法律の違いがある中で人材データベースやシステムを統一することに非常に苦労しました。国によって重視する情報も異なる上、扱う情報の多くが個人情報であるため、一つの人材マネジメントデータベースとしてシステムを統合することは容易ではなく、現在も試行錯誤を続けています。こうした中、弊社ではグローバル共通の「グローバルHRポリシー」を定め、各国で統一した考え方のもと、人材マネジメントを進めました。コンピテンシー(成果につながる行動)を見て評価することや職務等級制度を共通化するなど、グローバルでの基本的な考え方を示し、それを拠り所として各地で展開しています。
ジョブ型では、各自がどんなスキルを持ち、どんな仕事ができるのかを明確にして公開し、自分の強みを仕事に生かしていきます。ジョブディスクリプション(職務内容や必要なスキル等を具体的に定義した職務記述書)を明示することで、社員は「私はこの仕事をしてみたい。それにはこのスキルが足りないから、こういう努力が必要」ということがわかり、個人を起点としてキャリアを描くことができます。
社員の側としても、自分のスキルを「見える化」しておくことが重要です。そこで日本本社でも、社員が上長と相談しながら各自のスキルを定義することを試行しましたが、スキルの数が多すぎて運用が難しい等の指摘もあり、よりよい方法を模索しているところです。
――外国人材は自らのスキルアップや市場価値向上を優先する傾向にあると言われますが、育成・評価制度の見直しによる成果をどうみていますか。
宮﨑日本国内の仕組みがジョブ型になったことで、日本で働く外国人材の採用においてマッチングの精度が上がりました。受け入れ部門側が「この仕事ができる人材がほしい」と明確に示すので、海外の大学に採用にいくにあたっても、選考段階で候補者・応募者の適性を見極めやすくなりました。
日本国内においても、人材と職場のマッチングが良くなりました。異動に際して「こういう役割のポジションでこういうことができる人を求めています」と役割起点で人を募ることで、異動する人も受け入れ側も納得度が高く、その後の活躍度合いも高まると感じます。毎年キャリア申告(自己申告)で社員の現在の仕事に対する認識を確認していますが、「興味が持てる」「能力を発揮できていると思う」という率は上がっており、定着にもつながっていると考えています。新卒採用も職種別採用に変えたことで、入社後のミスマッチも大幅に減っていると見ています。
――外国人材の受け入れ・活躍に関し、今後力を入れていきたいことをお教えください。
宮﨑ジョブ型志向の外国人材は、自身がより活躍できる場を求めて動く傾向があり、定着のためには我々の組織のレベルを上げることが重要だと考えています。「社内にチャンスがたくさんあるから、ここで挑戦したい」と思ってもらえるように選択肢を提供できることが大事です。細かいところでは、社内でのキャリアの選択肢に関する情報が外国人材にもわかりやすいように、社内文書の英語化などもさらに進める必要があります。
本庄自分の仕事の価値を自分で見出してキャリアを描くことは、海外の人だけでなく日本人にとっても今後大切になってくると思います。そのベースとなるのはスキル管理であり、先ほども出たスキルの定義・スキル管理の仕組みを整えていくことが課題です。膨大な量のスキルを扱うことになるので、AI搭載のシステムを設計したいと考えています。また、日本では、ともすれば長く続いてきた職能型の考えに戻ってしまいがちなので、外国人材を含む多様な人材が、自らのキャリアを主体的に描きながら活躍できる環境づくりをさらに進めていきたいです。