トップページ > 関経連からの発信 > 会長コメント > 第52回定時総会 森会長挨拶

会長コメント

第52回定時総会 森会長挨拶

2014/05/19

 第52回定時総会の開会にあたりまして、一言ご挨拶させていただきます。
 みなさまには、この1年間、大変お世話になりました。お忙しい中、関経連の活動にご参加いただき、支えていただきましたおかげで、この1年間、何とか務めを果たすことができたように思っております。この場をお借りしまして、厚く御礼申し上げます。
 今年度も、みなさまとともに、そして、みなさまのために、精一杯取り組んでまいる所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 昨年度は、日本経済にとりまして、久々に明るい話題が多かった1年であったと思います。アベノミクスの追い風を受けて企業の業績が改善し、従業員の賃金を引き上げるところも多く見られました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催も決定し、先行きのマインドも随分と明るくなったように思います。一方で、この4月からは消費税率の引き上げにより、財政再建に向けた重要な一歩を踏み出すことができました。
 関西経済も同様に、明るい材料が目立った1年でありました。生産、輸出、雇用といった指標は、現在も軒並み好調を持続しております。足元では、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動があると見られるものの、夏以降は持ち直すと考えられております。
 昨年10月、「関西イノベーション国際戦略総合特区」におきまして、関西の念願でありましたPMDA関西支部の開設が実現したことも、大変明るいニュースでありました。また今年3月には、「国家戦略特区」の指定も勝ち取ることができました。イノベーション拠点としての関西の輝きが日増しに増していると、大いに手応えを感じているところであります。
 また、アジアでは初めての開催となる、2021年の「関西ワールドマスターズゲームズ」も決定し、関西を世界にPRする絶好の機会を得たと考えております。
 ご存知の通り、わが国は、少子高齢化やグローバル化への対応といった様々な構造的な課題を抱えております。このところは、それらが大きな重石となって、なかなか経済再生の道筋を描きにくい状況が続いておりましたが、安倍政権の誕生以降、政治のリーダーシップでそうした課題を1つ1つ解きほぐしていただいているおかげで、ようやく光明が差してきた気がしております。
 政治が安定している今は大きなチャンスの時です。関経連といたしましても、この機を逃さず関西経済を大きく飛躍させ、関西から日本経済の再生に力強く貢献したいと考えております。
 ただし、安全が確認された原子力発電所の再稼働が進まず、震災以来の電力不足が未だに解消していないのは、非常に残念なことであります。電力を思うように使えないことが原因で企業の活動が制約されるようなことがあれば、せっかく上向いた経済に水をさすことになりかねません。
 年間3.6兆円と言われる国富の流出も深刻です。1日あたりでは約100億円の計算となり、日本経済の体力を確実に蝕んでいます。
 現在、原子力規制委員会が、九州の川内原子力発電所の審査書案を作成しているところであります。川内発電所の再稼動が前進することは意義あることと考えておりますが、一方で、大飯や高浜などの他のプラントにつきましては、未だ再稼働の時期すら見通せないのが現状であり、まだまだ安心できる状況になったとは言いがたい状況です。
 これまでも再三訴え続けていることでありますが、関経連では今後も、原子力規制委員会の効率的な審査と速やかな判断により、安全が確認された原子力発電所の一日も早い再稼働が実現するよう要望してまいりたいと思います。

 関経連では今年度、これまでの実績や課題、新たなチャンスの芽などを踏まえまして、昨年からの引き続きであります「イノベーションの促進」と「国土強靭化の推進」に、「関西ブランドの強化・発信」を加えた3点を重点事業に定めました。

 1点目の「イノベーションの促進」につきましては、まず、これまで官民をあげて推進してまいりました「関西イノベーション国際戦略総合特区」の取り組みを、さらに加速したいと考えております。
 これまでに、先ほど申し上げましたPMDA関西支部の開設に加えまして、プロジェクト認定件数では全国最多の46件、企業の投資額は判明しているだけでも630億円という実績をあげておりますので、今後は、早期の事業化を目指したいと考えております。
 また、「関西イノベーション国際戦略総合特区」と「国家戦略特区」の双方でしっかりと連携して、相乗効果をあげることも必要です。
 先月、「関西イノベーション国際戦略総合特区」の地域協議会・委員会が開催され、井戸知事や松井知事、その他の委員のみなさまと、こうした方針を確認したところでありますので、引き続き、関西をあげて、イノベーションの促進に取り組んでいければと思っております。
 なお、関西の「国家戦略特区」では、「都市再生・まちづくり」の事業も含まれております。「うめきた2期」をはじめ、御堂筋・中之島などの都心再生事業にも、大きな弾みがつくものであり、関経連としましても、関西を、日本はもとより世界でも輝く国際都市圏に仕立て上げられるよう、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

 2点目の「国土強靱化の推進」につきましては、昨年、政府に対し首都中枢機能バックアップ体制の構築などを強く働きかけ、その必要性を広く浸透させることができました。今年度は、提案のさらなる具体化、明確化を進め、政府などに対する働きかけを強めてまいりたいと思います。
 将来の重要な国土軸となるリニア中央新幹線につきましても、国会議員や自治体関係者を招いた決起大会などを開催した結果、東京・大阪間の同時開業の機運を高めることができました。国土強靱化政策大綱にも、リニア中央新幹線は「国家的見地に立ったプロジェクト」と記載されました。
 同時開業実現のために残された時間はあとわずかしかありませんので、この1年、まさに関西の総力をあげて取り組んでいかなければならないと思っております。

 3点目の「KANSAIブランドの強化・発信」につきましては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや、その翌年の関西ワールドマスターズゲームズ開催決定により、関西に世界の注目が集まるチャンスを活かした戦略を練り上げたいと考えております。
 昨年は、円安や東アジア諸国のビザ発給要件の緩和などが追い風となって、訪日外国人客が1,000万人を突破しました。
 関経連では、関西広域連合などにもメンバーに入っていただいた「広域観光研究会」を設置しております。インバウンド促進に向けて関西が一体となった広域観光戦略を策定するほか、関西全体の視点からIRについても検討を深め、現在は首都圏の約半数にとどまっている関西への訪日外国人客数を、大きく上積みしたいと考えております。

 なお、これまで重点事業に掲げておりました「震災復興支援」につきましては、昨年、「食博覧会」における東北の食や観光の紹介、東北の将来を担う人材を育成する「関西起業塾」、組込みシステム産業における東北と関西のビジネス・マッチングなどに取り組みました。
 震災から3年が経過し、地域ごとに復興の進捗も異なっており、被災地のニーズも多様化、複雑化しております。今回、末長く支援を継続するという観点で重点事業とはいたしませんでしたが、今後も、被災地のみなさまに心を寄せ、それぞれのニーズに沿って、地道でも息の長い支援を実施していきたいと思います。
 また、分権改革の推進や、ものづくり人材の育成、関空や阪神港の機能強化、高速道路のミッシングリンクの解消などにも、精力的に取り組んでまいります。
 さらに、ベトナム政府と共同で設立いたしました「関西ビジネスデスク」や「関西・ベトナムビジネスラウンドテーブル」を通じた企業進出支援や、「グローバル人材活用運営協議会」を通じた外国人留学生の関西企業への就職支援などにも、引き続き取り組んでまいります。
 関経連では、2020年の関西のありたき姿といたしまして、「日本の双発エンジンとして日本をリードする」と、「アジア有数の中核都市圏となる」の2つを掲げております。そしてその実現に向けまして、2020年までの期間を3年ごとに区切って中期目標を設定し、毎年のPDCAサイクルを回すことにしております。
 今年は、第一期の中期目標の最終年度にあたりますので、ぜひ、それにふさわしい成果をあげたいと考えております。みなさまにおかれましても、ご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 最後になりますが、かつて、財界活動と言えば、けいはんな学研都市や関西国際空港の建設といったビッグ・プロジェクトを主導することが主たるものである時期がありました。経済が右肩上がりでぐんぐん伸びていく中で、インフラ整備の必要性は今よりもはるかに高く、政府の方でも、関西の様々な要望にしっかりと耳を傾けていただいていたと思っております。
 この頃に形成された資産の多くは、今の関西にとりまして重要な競争力基盤となっており、大変ありがたいことと感じております。
 それでは現代はと言いますと、もうそんな時代ではなくなったと思います。経済は成熟化し、政府の公共投資も当時に比べれば限定的なものとなりました。いわゆる「ハコモノ」に対する国民の目も厳しくなっております。
 かつての時代を「ハードの時代」とするならば、今日は、「ソフト」や「ネットワーク」の時代になったと言えると思います。つまり、既存の資産を最大限活用して100%や120%の成果をあげるために、関西のみならず、さらに広域的な連携を深め、新たな活用方策を見出していくことが重要です。
 その時に障壁となる規制があれば、その緩和を政府に求めていかなければなりません。そういったことが、今の経済団体に求められていることではないかと思います。
 関経連におきましても、こうした時代の要請にしっかりと応えていかなければなりません。地域のため、国のために、関西の強みを活かして何をなすべきかを考え、それを最後までやりぬかなければなりません。
 そのためには、みなさまの知恵や力を総動員する必要があります。事務局ともども、精一杯取り組んでまいりますので、みなさまにおかれましても、引き続きの、お力添えを賜りますことを重ねてお願い申し上げまして、私からのご挨拶とさせていただきます。
 みなさま、これからも、どうぞよろしくお願いいたします。