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会長コメント

第45回定時総会 秋山会長 開会挨拶

2007/05/28

1.世界、日本、関西経済の現状

定時総会の開催にあたり、一言ごあいさつを申し上げます。本日は皆さまご多忙の中、ご出席を賜りまして誠にありがとうございます。さて、世界経済は現在、一時的な減速を心配された米国経済が、先日のNY市場ダウ平均が過去最高値となるなど好調を維持している他、欧州・アジア諸国の経済も順調な拡大を続けています。これは、中国をはじめとする新興諸国が低い労働コストで大きな供給力を持っているために、世界中でインフレなき安定成長が実現した結果に他なりません。

2.日本経済、関西経済が直面するリスク

そうした中で日本経済、関西経済も回復基調が定着し、特に関西は先端製造業を中心に設備投資の拡大が続いていることに加え、長らく低迷していた京阪神都市部の地価も底を打つなど、地域の景気回復の拡大基調が定着しつつあります。
しかしながら、日本経済、関西経済がさらなる発展を遂げるためには、IT化やグローバル化の加速によって顕れてきている3つの大きなリスクにしっかりと対応していかなければなりません。

(世界的なボーダレス化と競争激化)
まず一点目は、ボーダレス化の進展とビジネススピードの速まりによって、日本・関西の経済や企業活動が極めて厳しい競争に直面していることであります。
 今日、日本の企業は、製品やサービスのコストについては常に中国やアジア諸国と、新製品開発のスピードでは欧米諸国と比べられるという、二つの面での激烈な競争の中にあります。
 それに加えて、今年五月に三角合併が解禁されたように、資本市場のグローバル化によって、企業経営の不確実性は益々高まっていると言わざるを得ません。

(メディアとインターネットの影響力の増大)
二点目は、企業活動をとりまく重要な要素であるメディアが非常に多様化し、その影響力を増しているということであります。20世紀が活字メディアの時代だったとすれば、まさに現代はインターネットや映像がより多く普及し、それらが世論と消費者行動を決めるという傾向が強まってまいりました。
 今後デジタル化や携帯電話の機能向上がさらに進めば、映像を中心とした情報の瞬時性・ユビキタス性が高まることが予想されます。それらは消費者の利便性を飛躍的に高める反面、企業にとっては社会的事件がとてつもなく大きなスケールに拡がるおそれがある等、大きな脅威にもなってくるのではないでしょうか。

(大災害や社会システム上の障害)
三つ目は、わが国が潜在的に直面している災害リスクが、社会全体の情報化の下でさらに増大しかねないということであります。
 わが国の国土特性からして、まず地震をはじめとした自然災害に常に備えを持たなければならないことは言うまでもありません。
 それに加えて、現在の高度情報化した社会とボーダレス化したビジネスシステムを考えると、より災害に対して強靭な国づくりの推進が求められます。その中で、各地域も代替機能をはじめとした新たな役割分担をしなければなりません。

3.今年度の関経連の活動

今年度の関経連の活動にあたっては、こうした3つのリスクに対処し、強い「関西」を作っていくということが中心であります。

(競争激化への対応~独自の価値創造とスピードアップ)
まず、世界規模の競争激化とビジネススピードの速まりというリスクに対しては、何よりも伝統文化をはじめとする関西ならではの強みに立脚した独自の製品・サービスを創り上げ、世界の情勢変化に揺さぶられることのない経済体質を作り上げることが重要であります。
 中でも、関西の強みであるIT、バイオ、ロボットといった先端産業について、さらに強化を図るとともに、コンテンツ産業や次世代サービスなどの新しいクラスター形成にも取り組んでいかなければなりません。
 また現在、新製品・サービスの創出を図る上で非常に重要な融合型イノベーションを促進するために、産学官連携の強化とそのための人材育成にも注力してまいります。

加えて、それらの企業活動を支える国際物流ネットワークについては、国際競争に生き残るだけのスピードアップが不可欠であり、陸・海・空一体となった機能強化を図ってまいります。

(メディア変革への対応~企業価値向上と消費者対話)
次に、メディアが高度化・高速化し、消費者の情報力が高まっていることに対しては、まず企業自身がコンプライアンス強化をはじめとする社会的責任を果たし、自らの価値を高めなければならないことは言うまでもありません。
 そのために、昨年度から取り組んでいる企業価値向上の取り組みをさらに加速するとともに、関西企業全体で消費者と常に対話し、ニーズを深く掘り下げ、製品・サービスづくりを目指して企業革新を進めてまいります。

(大災害等への対応~広域地域計画と街づくりの推進)
さらに、社会全体が情報ネットワーク化する中での大災害等への対応については、官への提言だけではなく、民、特に企業自身としての取り組みも重要になります。
具体的には、本年度策定作業が進められる国土形成計画について、関西としてあるべき国土像を提言していくとともに、計画の中枢である広域地域計画について関西の官・民・市民の総意のとりまとめに力を尽くしてまいります。合わせて、関西企業自身もしっかりとしたリスク対応策を確立しなければなりません。
また、大阪駅北地区開発については、Ⅱ期計画において、災害時首都機能代替や広域防災拠点を含め、国レベルでのリスク対応面での活用構想策定に向けて取り組みたいと思います。

4.むすび

以上、今年度の関経連の活動について基本的な考え方を申し上げました。具体的な施策については、本日審議いただく本年度事業計画のとおりであります。
さて、地域の発展には長期的観点からの取り組みが不可欠であることは言うまでもありません。今からおよそ百年前、オランダ人技師デ・レーケは、長年水害に苦しんだ大阪の町を守るために初めて淀川の本格的な治水計画を作り、閘門や洗堰(あらいぜき)を設計しました。これが今日に至るまで水の都大阪の経済発展と暮らしの安全を実現する大きな力となっているのであります。 関経連も、未来の関西の人々とその繁栄のために、関西のすべての企業・市民の力を結集して、新たな発想に立って道を切り拓いていかねばなりません。 会員の皆さまには引き続き、当会へのより一層のご支援・ご協力をお願い申し上げて、私からの開会の挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございました。